一人と一匹の大阪旅 大館市の角田さんと桃笑

秋田県大館市の角田佐知子さん(61)が、愛犬の秋田犬「桃笑(ももえ)」(雌、1歳)と共に、昨年11月に大阪府泉大津市で開かれた長毛の秋田犬の魅力を発信するイベント「わさお大賞」に参加した。青森県鰺ケ沢町の人気秋田犬で知られた「わさお」の名を冠し、長毛種に光を当てる催しで、2021年から大阪で開催されている。自家用車とフェリーを利用し、往復約2千キロを移動する長旅。「長距離運転はもともと得意ではないが、行ってみようと思った」。その決断の背景には、自身の病気と向き合った経験がある。

大館―大阪をフェリーと自家用車で往復した角田さんと桃笑。愛車には角田さんが以前飼っていた長毛の「もも」と短毛の「はちこ」が大きくプリントされている

角田さんが秋田犬と暮らし始めたのは20代後半。1匹目の「華千光(はちこ)」を迎え、その後「もも」「みっこ」も加わり、計3匹を同時に飼った。3匹を見送った数年後、再び迎える決意をし、短毛の「はちこ」と長毛の「もも」を迎えた。角田さんにとって2代目となる「もも」は初めての長毛犬。「本当は1匹をきちんと育てるつもりだったが、満面の笑みで見つめてくるももの姿に一目で心をつかまれた」と振り返る。

2023年冬、角田さんに胃がん、翌春に子宮がんが見つかった。幸いにもいずれも早期発見で、治療後の経過は良好だった。この経験が、残りの人生について考えるきっかけになったという。「自分の年齢のこともあり、体が思うように動かなくなる日が来るかもしれない。それでも、もう一度長毛で赤毛の秋田犬と暮らしたいと思った」。術後、主治医に相談した上で迎えたのが桃笑だ。

それまでの犬たちとは遠出をすることはあまりなかったが、東京で生まれた桃笑は、大館へ連れて帰る際も乗り物酔いをしなかったという。また、2代目「もも」が生きていた頃、鰺ケ沢町で開かれていた「わさお大賞」に参加したいと考えていたが、新型コロナウイルスの影響で中止となり、その思いはかなわなかった。「行ける時に行っておこう」。病気を経験したことで、その思いはより強くなった。

長距離移動に備え、角田さんは事前に、秋田犬仲間が住む仙台や富山まで運転し、距離への不安を軽減した。往路では仙台から名古屋までフェリーを利用したが、ペット同伴可能な個室はなく、桃笑を船内のペットスペースに。角田さんが運転する車ではくつろぐ姿を見せる桃笑も、初めてのフェリーは緊張しているように見え、角田さんはペットスペースに滞在できるぎりぎりの時間まで付き添ったという。

初のフェリー旅に緊張気味の桃笑

イベント当日は、各地から秋田犬と飼い主が集まり、会場は和やかな雰囲気に包まれた。わさお大賞にエントリーした犬には特技披露の時間が設けられているが、角田さんと桃笑は特別な演目を用意しなかった。

近くを人が通るたびベンチの下に隠れていた桃笑


桃笑は人前に出ると緊張しやすい性格だという。角田さんは申し込みの際、特技がなくても参加できるかを運営側に確認したところ、「大丈夫です」と返答をもらった。「何もなくても受け入れてくれる、心の広い大会ですよね」と角田さんは話す。秋田犬の多様性を尊重するイベントならではの姿勢だ。

特技の披露はなかったものの、桃笑はエントリー24匹の中で上位の得票を集めた。「長毛の秋田犬が多くの人に愛されていることが分かり、幸せな気持ちになった。順位よりも、参加できたこと自体が何より大きい」と角田さんは振り返る。

昨年11月に大阪府で開かれたわさお大賞に参加した角田さんと桃笑(角田さん提供)

帰路は大阪から日本海側を通り、知人の住む富山を経由して大館へ向かった。連休中の渋滞により、大阪から富山まで約15時間を要し、旅は出発から帰宅まで6日間に及んだ。「帰ったらくたくただったが、仲間や犬たちと出会い、世界が広がった」と充実感をにじませる。

今後については「桃笑と函館にも行ってみたい。大阪に行けたのだから、近いですよね」と笑う。今回の一人と一匹の旅は、これからの暮らしへの自信と希望につながった。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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