愛と情熱で「血統」守る 保存会秋田県南支部長武田さん

 秋田犬保存会県南支部長を務める武田幸士さん(74)=大仙市下鴬野=宅で5匹の新しい命が誕生し、すくすくと育っている。愛犬の秋田犬「桜」(雌、3歳)が8月下旬に産んだ5匹の子犬たちだ。

 誕生から約1カ月半となった10月上旬。武田さん宅を訪ねると庭先のケージの中でころころ、ふわふわした子犬たちが元気に動き回っていた。しばらくすると次第に落ち着き、今度は互いに寄り添って眠り始めた。愛くるしい寝顔も印象的だ。

 「子犬たちは今が元気盛りだね」―。そう語る武田さんの目は優しい。

8月下旬に誕生した5匹の秋田犬と武田さん。「何時間でも見ていられるよ」と頰を緩める=大仙市下鶯野の武田さん宅

 武田さんは1980(昭和55)年に犬舎登録して以来、45年以上にわたり秋田犬の保存と繁殖に取り組んできた。現在飼っているのは桜と、その母「蘭李(らい)」(雌、6歳)、桜の1度目の出産で生まれた「麗(うらら)」(雌、1歳)の3世代。商業的な繁殖よりも、地域で受け継がれてきた血統を守ることを大切にしているという。

5匹の子犬に授乳中の桜

 秋田犬に関心を持ち、武田さん宅に見学に訪れる人も少なくない。岩手県西和賀町で地域おこし協力隊を務めるエリック・シリックスさん(41)は、米国から旅行中の両親らと一緒に訪れた。「観光のPR活動のため、撮影で山に入ることが多い。クマ対策として、マタギの相棒だった秋田犬は頼もしい。飼うことを真剣に考えている」と話す。

犬舎に見学に訪れた岩手県西和賀町地域おこし協力隊のシリックスさん(右)

 子犬たちのケージのそばには、りんとした表情の麗がいる。今春、大館市で開かれた秋田犬保存会本部展で、壮犬雌の部の最高賞である優秀一席を獲得した。武田さんにとっては初めて。「自分の犬舎で生まれ、育てた犬が一席になるなんてうれしい。麗は人やほかの犬がたくさんいても動じなかった。たいしたもんだ」と語る。

今年の本部展壮犬雌の部で最高賞の優秀一席を獲得し、武田さんの自宅前で写真に収まる麗

 犬舎には普段ラジオが流れている。展覧会など人が多く集まる場所に行くと興奮する犬が多く、日頃から音に慣れさせることが重要と考えている。子犬たちにも、人のいる環境に慣れるためのしつけを早くから始めている。展覧会のためだけではなく、将来どの家庭でも落ち着いて暮らせる犬に育てるためだ。

 武田さんには、秋田犬を次の世代につなぐためのもう一つの取り組みがある。県南支部として一昨年から不定期で開催し、今年5月から毎月、大仙市の県立農業科学館を中心に実施している「ふれあい会」だ。

県南支部が定期的に開催している秋田犬とのふれあい会=今年6月

 会には秋田犬を飼っている人や、飼っていても保存会には入っていない人、飼うことに興味があり相談したい人などさまざまな来場者がいる。「そういう人たちがふれあい会で知り合い、より気軽にコミュニケーションが取れるようになった」と話す。

 保存会では秋田犬を飼っていなくても入会は可能としている。たとえ飼えなくても「秋田犬を思う気持ちを大切にしたい」との考えがある。「秋田犬は秋田の宝。失うわけにはいかない」と武田さん。さまざまな人が気軽に交流できる場をつくることで、秋田犬の魅力を広め、犬種の存続につなげたいという。

 5匹の子犬は近く、県内外の新たな飼い主の元へと旅立つ予定だ。次の飼い主にも「愛情を持って育ててもらいたい」。そんな願いを込めて見送るつもりだ。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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