いざ本部展、調整余念なし 飼育続け40年の遠藤さん【動画】

  • 2023-04-20
  • 2023-04-20
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 秋田犬の容姿の美しさなどを競う秋田犬保存会(秋田県大館市)の春季本部展が来月3日、大仙市の大曲市民会館第2駐車場で開かれる。全国から出陳予定の飼い主たちはこの時期、最終調整に余念がない。秋田犬を育てて約40年になる保存会会員の遠藤兵治さん(67)=秋田市飯島=もその一人だ。心血を注いで育てた犬で、上位入賞へ意欲を燃やす。

遠藤さんが本部展に出陳する奏(右)と北泰光

 今月中旬、遠藤さん宅を訪ねた。自宅裏にある犬舎に案内してもらうと、赤毛の秋田犬4匹がふわふわの毛並みを揺らして迎えてくれた。

 本部展にはこのうち、奏(かなで)(雌、2歳)が成犬Bの雌部門(30カ月以上48カ月未満)、北泰光(きたたいこう)(雄、1歳)が壮犬の雄部門(18カ月以上30カ月未満)でそれぞれ出陳予定。2匹は過去の本部展や東北北海道総支部展で、部門1位に相当する「1席」を獲得してきた。

 秋田犬を飼育する上で、遠藤さんが最も重視しているのが「清潔感」だ。ふわっとした美しい毛並みを保つため、2週間に一度のシャンプーを欠かさない。子犬の時から週1回のペースに慣れさせておくのだという。散歩後は土やふん尿などで毛が汚れないよう、それぞれの犬専用のタオルで体を拭いたり、ブラッシングしたりする。

 犬舎内も清潔に保つため、お湯で毎日床を拭く。5月ごろからは蚊取り線香を設置。かつて、虫に刺された犬が死んでしまったことが教訓になった。自作した犬舎内の小屋の床は、「木の板を食べてお腹を壊さないように」と網張りに。経験に基づいた工夫を随所に施している。

掃除の行き届いた遠藤さんの犬舎。小屋の床は網張りになっている

 遠藤さんはこの日、犬の立ち姿の美しさを競う「立ち込み」を見せてくれた。本部展で審査される項目の一つで、2匹はきりりとした真剣な表情を浮かべていた。他に、歩き姿や口を開けて歯を見せる練習も当日まで続けるという。

丁寧にブラッシングする遠藤さん

 今でこそ各種大会で好成績を収める遠藤さんだが、上位入賞できるようになったのは「50歳を過ぎてから」だという。

 保存会の会員になったのは25歳のころ。先に会員となり、秋田犬を飼っていた5歳年上の兄に影響を受けた。一緒に行った本部展で全国レベルの秋田犬を目の当たりにし、すっかり魅了された。

 いざ飼い始めたものの、大会では下位ばかり。20~30代は仕事や子育てで、犬にかけられる時間や金銭的余裕がなかった。一時は飼育をやめようとも考えたが、本部展へ行くたびに「自分もいい秋田犬を育てたい」と、再び闘志が燃え上がるのを感じた。

 会場で目にした犬の手入れ法を参考にしたり、兄や周囲のベテランに助言をもらったりして飼育に励んだ。妻の京子さん(68)にも子犬の世話や散歩を手伝ってもらった。

奏、北泰光の母・郷

最大の転機は57歳のころに訪れた。かかりつけの大館市内の動物病院から、「いい雌がいる」と秋田犬を譲り受けた。陸(ふう)と名付けたこの犬で、本部展や総支部展の3席以内を立て続けに獲得。現在、犬舎にいる郷(きょう)(雌、6歳)は陸の孫で、血統の良さを受け継ぎ数々の入賞を果たした。

 今回出陳する奏と北泰光は陸のひ孫で、郷の子どもだ。遠藤さんは「顔つきに雌らしさ、雄らしさが表れていて尻尾の巻きもいい」と自信をのぞかせる。本部展には他にも、全国の犬舎から郷の子どもが数匹出陳されることになっており、結果を楽しみにしているという。

 遠藤さんのように長年、情熱を持って秋田犬に接してきた人たちが集結する本部展は、誰でも無料で観覧が可能。会場に足を運び、全国レベルの秋田犬の魅力に触れてみては。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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