秋田県大館市の「こども食堂まるちゃん」に、赤毛が交じった虎毛の秋田犬「まる」(雌、1歳)がいる。訪れる人たちをもてなす看板犬になるために目下、奮闘中だ。
食堂は、まるの飼い主、鈴木満里さん(60)が代表を務める市民団体「ボランティアサークルファミリア」が月2回ほど開いている。
先月下旬の営業日の夕方、満里さんの夫・誠三さん(60)に連れられたまるが食堂前に現れた。スタッフに体をなでてもらった後は、リラックスした様子で地面にごろりと寝そべった。
この日は新型コロナウイルス感染防止対策のため、食堂内で食べてもらうのではなく、スタッフが作った弁当を持ち帰ってもらうことにしていた。
最初に訪れた子どもは、まるを見て「おっきい犬がいる!」と声を上げた。自分より体の大きい秋田犬に果敢に近づいておやつをあげたり、並んで写真を撮ったり。まるは終始穏やかな様子で、カメラに目線を向けるなどサービス満点だった。
別の子どもは、まるの大きさに圧倒され親にしがみついていた。
訪れる親子たちは、それぞれにまるとの触れ合いを楽しんでいるようだった。
満里さんによると、普段のまるは飽きてくると落ち着きがなくなるという。「今日は最後までちゃんとお出迎えしていてびっくり。取材されているって分かっていたのかも」と笑った。
サークルが食堂を始めたのは2019年。2年ほどたって、福岡県出身の満里さんは「大館といえば秋田犬。子どもたちを出迎えて癒やしを与える存在になってほしい」と、秋田犬を飼うことにした。
2021年冬、秋田犬保存会に紹介された市内の家へ行くと、生後2、3カ月のきょうだい犬3匹が雪の上で走り回っていた。満里さんの頭に浮かんだのは「犬は喜び庭駆けまわり」という童謡「雪」のフレーズ。誠三さんが赤毛が交じった虎毛が目立っていたまるを気に入り、譲り受けることにした。
満里さんがまると散歩に出かけると、その毛色はいつも注目の的。通りかかった人に声をかけられることも多い。トラやライオンの子どもと間違えられたこともあったという。
満里さんにとって、まるは初めて飼う犬だが「知らないからこそ、不安はそんなになかった」と話す。月に2回ほど展示のため訪れる市観光交流施設「秋田犬の里」のスタッフや、まるの生家から助言をもらっているという。
おやつをやり過ぎて体重が増えてしまった時は、低脂肪のドッグフードを与えるようにした。「かわいいからついあげたくなってしまうけれど…。共に長生きするためと思って心を鬼にしています」
散歩中、自転車にほえる癖が出てきた時は、自宅の庭で自転車に慣れる練習を繰り返した。人前に出るようになってからは、人をかんだり、ほえたりしないよう、しつけを徹底している。
満里さんは「まるちゃんを迎えたことで人の輪が広がり、県外出身の私が地域に溶け込むきっかけにもなった。これからも一緒に食堂の活動も頑張っていきたい」と語る。
もうすぐ冬。「こども食堂まるちゃん」を訪れると、雪の上ではしゃぐまるが出迎えてくれるかも―。
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