飼育放棄された秋田犬の未来のために“ワン”アクションを―。秋田県は保護された秋田犬3匹の飼育にかかる費用を、クラウドファンディング(CF)型ふるさと納税で募っている。初めて実施した昨年度と同様、目標額は200万円。ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」の専用ページから支援を受け付けている。来月23日まで。
対象となる秋田犬は、秋田市の一般社団法人ワンフォーアキタで飼育されているりんご(雌、11歳)、ごん(雄、10歳)、大河(雄、6歳)。いずれも過去にかみつき事故を起こしたり、飼い主に飼育放棄されたりしたところを保健所などが保護した。同法人が引き取ってからトレーニングを行い、現在は心身とも元気いっぱいに過ごしている。
同法人は秋田犬の殺処分ゼロを目標に掲げ、保護された秋田犬を里親につなげる活動をしている。3匹も譲渡を目指してきたが、高齢犬となるにつれマッチングが困難に。このため法人は、ごんと大河は引き続き譲渡の道を探る一方、最高齢のりんごは最後まで法人で責任を持って飼うことを決めている。
ワンフォーアキタの場合、秋田犬の飼育には餌代や、予防接種などの医療費、トレーニングにかかる経費(スタッフ人件費含む)などで1カ月に約10万円(1匹につき)が必要という。
支援者には特典としてお礼状やポストカードを送る。昨年度は255万6500円が集まった。法人のドッグトレーナー鈴木明子さん(63)は「保護活動は犬の命を救うだけでなく、幸せに生きることを最後まで保証するためのもの。1匹でも多くの秋田犬を救えるよう、支援をお願いしたい」と話している。
対象となる保護犬たち
りんご(雌、11歳)
秋田市で人間や犬に3度のかみつき事故を起こし、2020年12月に保護。当初は人間への強い不信感や恐怖心でおびえていた。高齢となった現在は、人前に出ることが生きがい。同市中通の「エリアなかいち」にある展示施設「秋田犬ステーション」では、愛くるしい表情で観光客を出迎えている。
ごん(雄、10歳)
岐阜県で飼い主が散歩に行かず、病気を治療せずにいるなどの飼育放棄が認められ、2019年8月に保護された。当初は人間に心を閉ざし、甘えるすべも知らなかった。今ではおっとりした心優しい性格を取り戻した。共に引き取られたきょうだいで白毛の雌、かりんは今年3月、乳がんで死んだ。
大河(雄、6歳)
秋田県大館市で飼い主の家族にかみつき事故を起こし、2020年10月に保護。警戒心から人間に対してうなるなどの問題行動が見られたが、トレーニング後には顔つきが柔らかくなり、甘えん坊な一面を見せるまでに。飼い主に車で保健所に連れて行かれたことが心の傷になり、今でも車に乗ることが苦手。