もふもふの虎毛の子犬が、こちらへ向かって一直線に駆け寄ってきた。小さな丸い体を揺らしながら猛ダッシュし、カメラを構える記者の足元まで来ると、そのまま体を預けるようにじゃれついた。レンズのピントが合わないほどの近さで甘える姿は、一瞬で人をとりこにしてしまう愛らしさがある。
名前は「白雪」。大館市にある「秋田犬cafe」を営む上田千里さん(33)=鹿角市=の一家に先月加わった秋田犬の雌だ。
白雪は3月19日、カフェの看板犬として人気を集める陸奥(雄、3歳)と、小坂町の酒販店「リカーショップたかはし」でレジ打ちをするようなしぐさがSNSなどで話題となった梅子(雌、5歳)の間に生まれた「三姉妹の次女」。長女の「きなり」と三女の「むすび」は埼玉県の2家庭に迎えられ、白雪は父親である陸奥の住む上田家で暮らすことになった。

5月11日に上田家にやって来た白雪。その時の体重は5・8㌔だったが、ぐんぐん成長し、3カ月で10キロに迫る勢いだ。他の犬にも人にも物おじせず近寄っていく好奇心旺盛な性格だ。
そんな白雪を待っていたのが上田家の3匹の他の犬たち。父親である陸奥は、遠慮なく近づいてくる娘に最初こそ戸惑った様子だったが、持ち前の穏やかな性格で受け入れた。「父親という自覚はないと思いますけどね。『家にまた新しい犬がやって来たか』という感じで見ている」と千里さんは笑う。
昨年2月に上田家にやって来た秋田犬の源太(雄、1歳)は、最も早く白雪のおてんばぶりになじんだという。一緒にくつろぐ姿も見られ、良き遊び相手になっている。
一方、最年長のチワックス、ルーシー(雌、5歳)は〝指導役〟のお姉さんだ。白雪の物おじしない態度をたしなめるように厳しく接したり、ほえたりすることもある。白雪はそうした3匹の犬たちと行動を共にする中で、少しずつ「犬社会のルール」を覚えているようだ。

家の近くには千里さんの祖父児玉兼吉さん(89)=鹿角市=の畑があり、近くには川が流れている。そこは犬たちのお気に入りの遊び場だ。畝の間を縫うように駆け回ったり、作業小屋でのんびり休んだりと、思い思いに過ごす姿を、兼吉さんや祖母のキミさん(84)が目を細めながら見守っている。
水遊びが好きな陸奥に兼吉さんが「川行くか」と声をかけると、白雪も後を追い、ためらうことなく川へ入った。初めての川遊びとは思えないほど無邪気にはしゃぐ姿に、千里さんは「陸奥の子だなぁ」と感心した様子だ。

白雪は現在、秋田犬カフェでの本格デビューに向けて準備期間中。ワクチン接種が終わるまでは来店者との触れ合いは行っていない。雰囲気に慣れるため店内に短時間とどまるだけにしているが、既に「白雪ちゃんに会いたい」と訪れる人もいるほどの人気ぶり。白雪の母・梅子の飼い主である高橋延枝さん(61)=小坂町=は「人気者の陸奥と梅子の血を受け継いでいる。人をとりこにする愛嬌は天性のもの」と太鼓判を押す。
また、千里さんと夫の将之さん(39)は、秋田犬保存会会員としてこれまで陸奥を本部展へ出陳させているが、白雪の出陳も視野に入れている。千里さんは「秋田犬カフェで多くの人に魅力を発信するだけでなく、秋田犬を飼う者として、やれることはやっていきたい」と語る。

人懐っこく、誰にでも駆け寄っていく白雪。上田さん一家や他の犬たちに見守られながら、新たな看板犬となる日を待っている。
