長毛のヒーロー・わさおにお別れを 後輩2匹、「偲ぶ会」に参列

  • 2020-08-21
  • 2020-09-10
  • NEWS
  • 6390view
「わさおを偲ぶ会」会場に駆け付けた、小次郎(左)とわび助

 白くて長いもふもふの毛と愛くるしい表情で、日本中の人気を集めた青森県鰺ケ沢町の秋田犬「わさお」が天国へ旅立って2カ月。どうしてもわさおに最後のお別れをしたい―。そんな思いを抱き、8月9日に同町で行われた「わさおを偲(しの)ぶ会」に、大阪府と大仙市の長毛秋田犬オーナーが、それぞれ愛犬を伴って駆け付けた。秋田犬保存会(本部大館市)が定める秋田犬標準から大きく外れ、愛好家の間で偏見を持たれることの多い長毛秋田犬だが、その魅力を広めたわさおは、2人にとって“恩犬”のような存在だったという。

会場には、小次郎、わび助の連名によるスタンド花も飾られていた

 偲ぶ会に参列したのは、大阪府泉大津市の自営業河野海(つよし)さん(43)と、大仙市南外の自営業相馬ゆかりさん。飼い犬はいずれも虎毛の雄で、それぞれ小次郎とわび助(共に3歳)。

 秋田犬の雄同士は、ストレスをためないよう“ソーシャルディスタンス”を保つ必要があるといわれ、2匹は会場の外で適切な距離を保ちながら偲ぶ会を見守った。終了後は関係者の計らいで、それぞれわさおの遺影との「2ショット」撮影が実現。天国へ旅立った大先輩へ別れを告げた様子だった。

わさおの遺影とともに写真に納まる河野さんと小次郎

 2匹は昨年8月に鰺ケ沢町で開かれた「第5回秋田犬長毛犬わさお大賞コンテスト」に出場し、小次郎は出場14匹の頂点に立った。このコンテストは、小次郎とわび助にとって、わさおと対面する最後の場となった。

 1年ぶりに来町した河野さんは「偲ぶ会には何とか仕事の都合をつけて来た。最優秀賞も取れたし、わさおとは何か深い縁があるんだろうな」。車で大阪から駆け付けた疲れも見せず、しみじみと話した。

 河野さんと相馬さんは長毛秋田犬の愛好家として以前から親交があり、偲ぶ会の会場にも2匹の連名で献花していた。それだけに、長毛を取り巻く一部の偏見に複雑な思いを隠さない。

オープンカーで「わさおを偲ぶ会」に訪れた相馬さんとわび助

 「表面上は『かわいい』と言いながら、裏では私たちに『長毛は秋田犬の生まれ損ない』とひどい言葉を浴びせる人もいる」と相馬さん。だからこそ、わさおは「犬という枠を越えた存在」。推定13歳、大型犬としては大往生を遂げたわさおに「よく頑張ってくださいました、と声を掛けたい」と話す。

 河野さんにとっても、わさおは「同じ長毛秋田犬の中でも次元が違う存在」。「わさおと飼い主の絆の強さが、人々に感動を与えてくれた」と捉える。

 河野さんは現在、こんな構想を温めている。家族との本県への移住だ。「秋田犬についてもっと深く勉強したいし、秋田犬の本場で長毛秋田犬のことを認めてもらいたい」というのが理由。当初は今年中に移住を実現する考えだったが、新型コロナウイルス感染拡大が収束するまで計画は棚上げしている。

 「わさおのように、とはいかなくても、小次郎も秋田の人に愛してもらいたい」と河野さん。そう遠くない将来、本県で第二のわさおブームが訪れるかもしれない。

「わさお大賞」司会者も偲ぶ会に参列 「最初はデマだと思った」

 わさおを偲ぶ会には、「わさお大賞」で毎年司会を務めている札幌市の西川圭さん(40)=会社員=も参列していた。

 わさおの訃報はネット上で知ったが「正直、最初はデマだと思っていた」という。今年3月には、わさおと対面したこともあるタレントの志村けんさんが新型コロナ感染症に伴う肺炎で亡くなったが、志村さんは以前、ネット上で死亡説が流れたことがある。「同じようなものだと思っていたが、本当のことだと確認できた後も、しばらく実感がわかなかった」という。

 西川さん自身、秋田犬を2匹飼っている。うち一匹は15歳。「私の犬より先にわさおが死んでしまうことは考えていなかった」と残念そうに話す。

 「色々な人や犬の運命を変えてくれた犬だと思う。天国で母さん(最初の飼い主だった菊谷節子さん)、志村さんと仲良くしてほしい」と話していた。

>わんこがつなぐ世界と秋田

わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

CTR IMG