暑さが苦手な秋田犬、夏をどう乗り切る?

  • 2021-07-12
  • 2021-07-12
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 犬は寒さに比較的強い半面、暑いのは苦手だ。汗をかくことがほとんどなく、人間のように体温調節ができないからだ。中でも、大きな体をモフモフとした毛で覆われた秋田犬にとって、夏はつらい季節。ブリーダーや飼い主たちは、暑さを乗り切るためにどんな工夫をしているのだろうか―。

木々が生い茂り、日よけできる場所を散歩する秋田犬。気温が上昇するこれからの季節、犬の体調には気を付けたい

 能代市にある秋田犬専門犬舎「能代幸寿荘」。十数匹が暮らす小屋ではこの時季、3台ある大型扇風機が24時間フル稼働している。

 ブリーダーの本瀬純一さん(58)は「とにかく日差しを遮り、風通しを良くすることを心掛けている」と話す。

 小屋には、西日を防ぐために2種類の遮光シートとよしずが設置されている。記者が訪れた日は、能代市の最高気温が29・9度まで上がり、壁面にある窓は全開となっていた。気温がもっと高い日は、窓のサッシを外して一層風が入りやすくしているという。小屋の周囲に打ち水をしたり、屋根に水をかけたりすることもある。

 小屋の内部は、コンクリートの床の上に隙間を空け、すのこ状に木の板が敷かれている。犬たちの足元から風を入れるための工夫だ。

3台の大型扇風機がフル稼働する能代幸寿荘の小屋。暑さが厳しい日中、犬たちはおとなしく過ごしている

 本瀬さんが小屋に入ると、生まれて1年に満たない子犬たちはじゃれついてきたが、ほとんどの犬はケージの中で伏せながら、おとなしく過ごしていた。

 「今日はまだしのぎやすい方だが、昨年9月に最高気温が37・7度まで上がった時は大変だった。20キロ入りの氷を7袋買ってきて床にばらまいたものの、1時間ほどで溶けてしまった」と本瀬さんは苦笑いする。

 外気を取り入れる一方で、蚊への対策も欠かせない。フィラリアという寄生虫を媒介し、犬の命を脅かすこともあるからだ。小屋の内部や入口では、常に蚊取り線香をたいている。

 この時季、本瀬さんは犬たちの食事の量にも気を遣っている。「食が細ると一気に体力が落ちる。おなかを下した時は速やかに整腸剤を与え、しっかりエサを食べさせて夏バテしないよう気を付けている」

千秋公園の「秋田犬ふれあい処」でも扇風機やよしずなどで暑さ対策を行っていた

 秋田市の千秋公園にある「秋田犬ふれあい処(どころ)」でも、秋田犬が入った柵の周辺に扇風機が3台置かれていた。柵の西側には日差しを防ぐためのよしずもあった。

 ふれあい処では、秋田犬保存会の会員が飼育する犬を1匹ずつ日替わりで展示している。

 木々に囲まれた公園内は街中より涼しく感じられるが、猛暑が予想される日は展示を取りやめる。

 6月下旬、愛犬の春花姫(4歳、雌)をふれあい処に連れてきた榎誠祐さん(73)は「この時季は朝は午前5時ごろ、夕方は涼しくなってから散歩している。犬の息づかいを見て、つらそうな時は犬用の経口補水液を与えることもある」と話していた。

 大館市の観光交流施設「秋田犬の里」の展示室には十和田石のプレートが敷かれている。ひんやりした石の上で、犬たちが寝そべって体を冷やせるようにと設置した。

 実際に、夏場は犬たちのお気に入りの場所となっているという。佐藤和浩館長(63)は「飼い主の中には『こんなに犬が気に入っているなら自宅にも敷きたい』という人もいる」と話す。

氷枕、アルミプレートなど暑さ対策グッズが並ぶ店頭=秋田市御所野のワンラブフレスポ御所野店

 ペットショップではこの時季、暑さをしのぐためのグッズが販売されている。秋田市御所野の「ワンラブフレスポ御所野店」では、氷枕やジェルマットなどを目立つ場所に並べていた。

 店員によると、アルミプレートや触るとひんやりとした感触のマットが人気だという。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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