もふもふとした毛並みとつぶらな瞳の秋田犬を間近で眺め、なでたり写真を撮ったり―。秋田犬ファンの夢をかなえる場所が5月、大館市大町にオープンした。その名も「秋田犬café」。連日、癒やしを求める来客でにぎわっている。

店に入ると、赤毛の「陸奥」(雄、2歳)と「源太」(雄、9カ月)がしっぽをふりふり出迎えてくれる。2匹の様子を紹介するTikTokやインスタグラムなどSNSのフォロワーは合わせて8万人を超える。
カフェのオーナーは、2匹の飼い主である上田千里さん(32)=鹿角市在住。2年前に陸奥を飼い始めてから各地のイベントに連れて行き、犬や人との交流を深める中で、「秋田県内には秋田犬と直接触れ合える場所が意外と少ない」という声をたびたび耳にしてきた。散歩途中やイベントで行き交う人が陸奥を見て笑顔になる様子に、「犬好きならきっと触りたいし、癒やしを求めているはず」と確信。1年ほど前からカフェ開業の準備を始めた。
拠点は秋田犬の里や保存会がある大館市にした。動物との触れ合い営業に必要な資格を取るため、勉強や実績を積んだ。カフェ開店の準備と並行し、今年2月には陸奥のおいにあたる「源太」も家族に迎え入れた。幼犬ならではのかわいらしさが加わり、SNSの人気はさらに上昇した。
秋田犬関連事業の展開や異業種との連携も視野に、上田さんは「株式会社MofuMofu」を設立。「秋田犬に触れ合えるカフェというだけでなく、『歴史を知りたいならここ』『秋田犬と泊まれる宿はここ』といった案内もできる、地域全体を盛り上げる観光拠点になりたい」と語る。
開店にあたり、ポスター掲示やSNS発信など、地道な周知活動を続けた成果もあり、7月の来客数はオープン時の2倍に。特にSNSでのPR効果は大きく、来店客の約8割が県外からだという。「ありがたいことに『ここを目指して来ました』という方が多い。好きなものがあったら距離は関係なく来てくれるんだと改めて感じた。秋田犬という犬種に触れたいという人だけでなく、『秋田犬の陸奥と源太に会いに来た』と言ってくれる人もいます」と笑顔を見せる。

人気が高まるにつれ、犬のストレスによる体調不良やカフェ運営上の安全面にも配慮が必要になる。そのため、現在は陸奥と源太に加え、地域の仲間が飼う秋田犬など計8匹が「看板犬」として交代で接客する。「将来的には多くの犬が別の施設で触れ合い体験などに対応できるよう、実践トレーニングも兼ねています。もっと秋田犬が身近に感じられる場所が増えたら最高ですよね」と、上田さんは目を輝かせる。

営業は土日祝の午前11時~午後6時(ラストオーダー午後5時)。料金は30分(触れ合い10分)1ドリンク付き大人2千円、子ども千円。触れ合いのみやカフェのみなどのコースもある。詳細はインスタグラムから。