「茶だの白だのってはコンテスト用の犬だべ。秋田犬のもどもどの地犬はヨォ虎毛だぞ」―。
人気漫画「銀牙―流れ星銀―」で、主人公「銀」の飼い主・大輔はこう言い放つ。作品の中、虎毛の秋田犬はクマ狩りにふさわしい勇敢な性質を持つとされている。
作者の高橋よしひろさん(68)=秋田県東成瀬村=は「私の父が同じようなことを言っていた」と話す。
「父は猟師ではなく、ただの動物好き。おそらく村の人々も皆、そう考えていたのでしょう」
虎毛の秋田犬を主人公に選んだのは、現実的な側面もある。「漫画は通常モノクロ。赤毛など色の付いた犬より、モノクロでも絵になる虎毛の方が都合がいい。強そうで格好良いのも魅力」
1983年の連載開始以来、銀の息子が活躍する「銀牙伝説WEED」、現在も連載中の「銀牙伝説ノア」など、銀牙シリーズは世代を超えて人気を集めている。横手市の増田まんが美術館では、高橋さんの画業50周年記念展が今月16日まで開かれている。
高橋さんが子どものころ、実家では「クロ」という秋田犬の血を引く雑種を飼っており、兄弟のように育ったという。近所で飼われていた秋田犬と遊ぶこともあった。
「子どもの教育のためには犬を飼うことを勧めたい。痛みや死の悲しみを知ることができるから」
秋田出身者として、勇敢で美しい虎毛の秋田犬は誇るべき存在だと思っている。“銀牙ワールド”の中で、虎毛の活躍は令和の時代も続いていく。