三種町のクアオルト犬「マサ」 人懐っこい「癒やし系」

  • 2022-01-20
  • 2022-01-20
  • NEWS
  • 869view

 自然や温泉を生かしたクアオルト(ドイツ語で「療養地」「健康保養地」の意味)を活用した観光振興に取り組む秋田県三種町で、秋田犬と一緒にウオーキングをして健康づくりに生かす体験プログラムが行われている。沿岸部の町にもまとまった降雪があった今月3日、ウオーキングのパートナー犬「マサ」に会いに行った。
(取材・鎌田一也)

三種町のことおか中央公園には、この日の「マサと初歩き」を告知する看板が設置されていた

 この日、真っ白な雪に覆われたことおか中央公園に、町内のウオーキング愛好者約30人が集まった。「マサと初歩き」と銘打って、新春のウオーキングコースを一緒に歩くのだ。

 大勢の人を前にして、マサは少し落ち着かない様子。差し出された餌を前に「待て」ができなかったり、会場に到着したばかりの人とじゃれ合おうとしたり。

人懐っこく、どんな人ともじゃれ合いたがるマサ

 そんなマサに、ウオーキング愛好者たちは、やんちゃな幼子を見守るように温かく接していた。多くの愛好者は子犬の頃からマサを知っており、同公園内を度々一緒に歩いているという。

 マサは2020年4月生まれの雄。一般社団法人「ヘルスケアデザイン秋田」が提供する観光体験プログラム「秋田犬と散歩」のパートナー犬となってから2度目の冬を迎えた。

 新型コロナウイルスの影響は大きく、ここ1年余りの利用者は合わせて100人程度と伸び悩んでいる。法人職員でマサを飼育する鎌田真広さん(39)は「せっかく予約が入っていても、コロナの影響でキャンセルされることも少なくなかった」と残念がる。

 「秋田犬と散歩」の一番の売りは、参加者がマサのリードを持って歩くこと。マサはとても人懐っこく、人に対してほえかかることはないという。20年9月に鎌田さんとの生活が始まって以来、マサは町民と一緒にウオーキングを重ねることで、人に慣れていった。そのおかげで、今では犬に慣れていない人がリードを握っても大丈夫だという。

ウオーキングを始める前に、参加者とマサで記念撮影

 鎌田さんとマサが日々の散歩で訪れるのは、ほとんどがこの公園だ。自然豊かなコースをくまなく歩いたり、湧き水を飲んだりすることがマサの日常となっている。

町民と一緒にウオーキングするマサ。歩き慣れた場所でリラックスした表情を見せている

 ウオーキングが始まる前はやや興奮していたマサだが、いつものコースに足を踏み入れると落ち着いた。マサと親しくしている町民たちが代わる代わるリードを握り、森の中の道を静かに進んでいく。開けた場所に出ると、元気いっぱいに駆け回り、やんちゃな姿も見せた。

開けた場所で、元気いっぱい駆け回るマサ

 「もっと厳しくしつけた方が良かったのかなと思うこともあるが、マサの人懐っこさを観光客も喜んでくれるので…」と鎌田さん。

 公園の近くに住み、ウオーキングコースを整備しているという木田章さん(79)は「マサは優しい顔立ちで見ているだけで癒やされる。これでも、来た時よりは大人になったよ」と笑顔で話した。

 鎌田さんは「マサや『秋田犬と散歩』のプログラムは、まだ多くの人に知られていない。コロナ後を見据え、会員制交流サイト(SNS)などでの情報発信を強化しながら、健康経営に取り組む企業にも働き掛けていきたい」と意気込む。健康づくりを通した観光振興に貢献するマサの活躍は、これからが本番だ。

健康プログラム「秋田犬と散歩」 季節を問わず体験可能

 まだ雪が積もる前の昨年12月、記者も「秋田犬と散歩」を体験した。秋田犬どころか、小型犬のリードも握ったことはない。最初はマサの力の強さに驚いたが、慣れてくると、強い引き心地が快感に思えてきた。秋田犬のオーナーがしばしば「他の犬を飼うことは考えられない」と言うのも分かるような気がした。

ことおか中央公園内のコースの発着点に立つ鎌田さんとマサ。マサ用の小屋もある

 「秋田犬と散歩」は、季節を問わず体験可能。ことおか中央公園の駐車場に集合、公園内のコースを巡る。所要時間は健康チェック、準備運動、マサとの記念撮影を含めて約1時間。

 開始時刻は午前9時半、午後1時半の2回。1週間前までに予約が必要。参加者が1人でも実施するが、悪天候の場合は中止、もしくは歩く距離や時間を短縮する場合がある。1人2千円(保険料込み。団体割引、子ども割引あり)。

 この時期は防寒はもちろん、深い雪の中を歩くために長靴などの備えが不可欠。他の季節でも、歩きやすく防水性のある靴が望ましい。また、マサがじゃれついてきて、服を汚す可能性があるのでご注意を。問い合わせは鎌田さんTEL080・5663・4606

>わんこがつなぐ世界と秋田

わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

CTR IMG