地域、家族の愛情一身に 大仙市の大石さんと孝太郎【動画】

 「近所を毎日散歩するだけでも、今まで知らなかった人たちと交流できて楽しい」。秋田県大仙市太田町の大石たみ子さん(66)は、孝太郎(雄、4歳)との日々をそう語る。孫の要望で飼い始めてから4年、今では家族の中心的存在だ。

孝太郎(右)が「世界を広げてくれた」と話すたみ子さん

 たみ子さんは夫の勲さん(72)、勲さんの母、長女と暮らす。秋晴れのある日、自宅を訪ねると、散歩に出かけるところだった。孝太郎は現在およそ30キロ。ややほっそりした体形とはいえ、足取りには秋田犬らしい力強さがある。長靴姿でロープを引くたみ子さんも、なかなかの体力の持ち主だ。

 朝と夜、1時間ほどかけて近所を散歩させるのが、たみ子さんの日課。「歩き過ぎて、靴の裏にすぐ穴が開くのよ」と笑う。

 散歩コースでは、孝太郎を待っていて魚肉ソーセージをくれる人、「なんぼ(何歳)になった?」と声をかけてくれる人…。人との縁、コミュニケーションの場が広がっているのを感じる。

家の近所を散歩する孝太郎(右)とたみ子さん

 近所にも秋田犬を飼っている家が何軒かあり、孝太郎を通じて仲良くなった。大好きだった雌の秋田犬とは長い間、散歩のたびに顔を合わせる仲だった。昨年暮れに死んでしまったが、孝太郎は今でもその家の前を通ると振り返り、探すようなそぶりを見せるという。

 雨脚が強い日は、たみ子さんお手製の雨がっぱを着て散歩へ。早く切り上げるため、分かれ道で「きょうはそっちじゃないよ」と声をかけると、普段とは別の方をちゃんと選んで歩く。「人の話をしっかり聞いて理解している。物覚えがいい」

 孝太郎を飼ったきっかけは、当時高校生だった孫娘が犬を欲しがったこと。遠方のペットショップにはなかなか行けないと悩んでいた時、新聞広告でたまたま、秋田犬の子犬の飼い主を募集しているのを見つけた。幸い、自宅と同じ大仙市内の犬舎が出した広告だった。

 すぐに連絡して見に行くと、生後2カ月の子犬が数匹待っていた。首の後ろに白い模様がある1匹を見て、勲さんが「目印になる」と選んだのが孝太郎だ。4歳になった今も、白い模様が小さく残っている。犬を欲しがっていた孫も大喜びで、たみ子さんの家に頻繁に来てはかわいがってくれた。

生後2カ月(左)から首の後ろにあった白い模様は、4歳の今も残っている

 たみ子さん夫婦はコメを育てており、稲刈りシーズンは大忙し。小さいときはコンテナに孝太郎を入れ、田んぼによく連れて行った。コンバインの音が響き渡る中で過ごしてきたせいか、車や雷などの大きな音にも動じなくなった。

 勲さんは「全然ほえないから、番犬には向いていないな」と苦笑い。「それでも家に孝太郎がいるのと、いないのでは全然違う。家族の会話が増えた」と話す。既に社会人となり都内で暮らす孫は、帰省するたびに顔を出し、孝太郎とじゃれ合っている。

 同居の長女が働くホームセンターにはペットサロンが併設されていて、仕事が休みの日に孝太郎を連れていくと、職場の同僚たちもかわいがってくれる。「どこに行っても人気者だよね」とたみ子さん。

小屋入口のふちにあごを乗せて休む孝太郎

 夫婦には夢がある。「孝太郎といつか、(秋田犬保存会の)展覧会に出てみたい」。同保存会県南支部の武田幸士支部長(72)は「雄らしい顔つきで、毛色もいい。優しい飼い主に恵まれ、穏やかな性格に育っている」と評した。

 地域の人たちと家族の愛情を一身に受ける孝太郎。これからも人と人をつなぎ、たみ子さんたちの世界を広げてくれるはずだ。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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