【秋田犬新聞】横手市の佐々木さん夫婦と忠吉・ハナコ 自然感じて穏やかに

 秋田県横手市の佐々木優美(まさみ)さん(59)の大切なひとときは、自宅の庭で2匹の秋田犬と過ごす時間だ。落ち着いた性格の忠吉(5歳)と、活発に動き回るハナコ(同)。ビオラが咲く庭を2匹は尻尾を揺らしながら駆け回る。自然を感じながら、穏やかな時間を共に過ごしている。

 優美さんが秋田犬にひかれたのは約10年前。横手市の道の駅さんないに立ち寄った際、駐車場で見かけた秋田犬に目を奪われた。声をかけると近寄ってきて、差し出した手をなめてきた。ぐっと距離を詰め、じゃれついてくる姿に「大きくて堂々とした犬なのに、人懐っこさと優しいまなざしに魅了された」と振り返る。

 夫の勇吉さん(73)も大の動物好き。優美さんとの結婚前には、秋田犬やゴールデンレトリーバーなどと暮らした経験がある。「人生の最後に犬を飼うならば、もう一度秋田犬を」と思っていたが、自身の年齢や体力を考え、大型犬との生活は難しいと感じていた。

ビオラが咲く佐々木さんの庭で遊ぶ忠吉(右)とハナコ

 しかし、秋田犬への憧れをずっと抱いていた優美さんの思いに心を動かされ、勇吉さんは5年前、再び秋田犬を迎えることにした。

 こうして2人のもとにやってきたのが忠吉とハナコ。勇吉さんは「忠吉は自分に似ていてシャイ」と笑う。おとなしい忠吉は、活発なハナコにいつも振り回されているという。

 ハナコはいたずら好きで、2人の靴を隠したり、忠吉の毛布を犬小屋から外に放り出したりする。優美さんにいつも怒られるのはハナコだが、しょんぼりとして申し訳なさそうな表情を浮かべるのは、なぜか忠吉だ。

 忠吉とハナコへの愛情は、自宅の車庫にも表れている。車庫のシャッターには、虹が架かった風景の中にたたずむ2匹の姿が描かれている。お気に入りの写真をもとに大仙市の業者にプリントしてもらったもので、家を訪れた人が写真を撮っていくことが多い。勇吉さんは「ちょっとした撮影スポットになっていてうれしい」と目を細める。

自宅のシャッターには、虹のかかった風景にたたずむ2匹が描かれている

 勇吉さんは、企業の経営指導に携わり、全国各地を飛び回る。多忙な日々の中でも、犬との触れ合いが癒やしになっている。趣味は園芸と日曜大工。季節の花が咲く庭の花壇やコイが泳ぐ池、犬小屋などは、自らの手で丁寧に作ってきた。「自然に囲まれて犬と過ごす毎日が本当に幸せ。人生の楽園だな」とほほ笑む。

 優美さんは、東京と大阪でエステティシャンの養成学校を運営している。横手市の自宅にいる日は、朝夕に2匹と散歩するのが日課。散歩中に田んぼにいるカモを見つけた忠吉とハナコが勢いよく走り出し、リードを離さなかった優美さんが用水路に落ちたことも。「痛かったけど、全部が愛おしい思い出」と笑う。

自宅の近くを散歩する優美さんと2匹

 互いに出張が多く、2匹の世話は交代制。出張が重ならないように、月の3分の1ずつを交代で担当し、残りの3分の1は一緒に世話をするようにしている。勇吉さんは「忙しいときも、この子たちが待っていてくれると思うと頑張れる」と話す。

 優美さんは「家で忠吉とハナコと一緒に過ごす時間が、本当に幸せ。遠くへ出かけなくても、庭に咲く花を見ながらこの子たちと過ごすだけで心が満たされる。ずっとこうして暮らしていくことが一番の願い」と語った。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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