サッカーJ2のブラウブリッツ秋田のサポーターが応援のために振っている旗の中に、秋田犬が大きくプリントされたものがある。リラックスした表情で寝そべる赤毛の姿は、戦いの場であるスタジアムの中でひときわ目を引く。
応援旗を制作したのは、能代市在住の会社員、渡部卓也さん(51)。過去にもフラッグを数枚制作、試合会場で振ってきたという。新作を作るに当たり、「ブラウブリッツの横断幕やフラッグにはナマハゲをデザインしたものが多い。それ以外で秋田らしさを表現したかった」と考えたという。
縦2・5メートル、横3・5メートルの旗の中心にプリントされているのは、大館市の温泉宿泊施設「ふるさわおんせん」の看板犬「華」(はな、雌、3歳)。温泉の常連客であるサポーター仲間が撮影したものだ。
温泉の専務で華の飼い主の佐々木桂さん(50)は、「当温泉の看板犬ということもあり、華やその母親である温(はる、4歳)を他のキャラクターとして使いたいという話は断っている」というが、常連客のお願いということもあり、特別に使用を快諾したという。「初めて旗を見た時にはその大きさに驚いた。華も旗に興味津々な様子だった。自分がプリントされていることには気付いてなかったと思うけれど」と話していた。
応援旗は当初、2020年にスタジアムでお披露目する予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、スタジアムで旗を振って応援することが禁止された。それどころか、しばらくは、熱心なサポーターが集まるゴール裏の座席も開放されず、いつものような応援もままならない状態が続いた。
ようやくブラウブリッツの本拠地ソユースタジアムにフラッグが登場したのは2021年春のこと。ゴール裏の座席が開放された際、「そのままでは殺風景なスタンドを少しでも華やかにしよう」と旗を横断幕のように張り出したという。同年秋からは旗を振った応援も解禁。まだ大声を出しての応援は禁止されているが、少しずつ以前のような応援の形を取り戻してきている。
「写真をそのままプリントした応援旗はあまり無いので、どのような反響があるか心配だったが、かわいいという声が多く安心した。対戦相手のサポーターからも好意的に受け止められている」と渡部さんは笑顔を見せる。
渡部さんがブラウブリッツのサポーターになったのは約10年前。最初は何となく試合会場に足を運んだというが、ゴール裏で熱心に応援するサポーターの姿を見て一緒に応援したいと思うようになったという。特に前監督の間瀬秀一さんに心酔しており、今回のフラッグにも、間瀬さんの信条でもある「全員力」という言葉を盛り込んでいる。「現在の(吉田謙)監督に失礼にならないよう、小さな文字にした。ただ、これからもブラウブリッツには、全員一丸で戦う姿勢を失わないでほしい」と話す。
J2初陣の昨年は、粘り強い戦いで22チーム中13位とまずまずの成績を残したBB秋田。「あわよくば上位に食い込んでほしいが、まずは何とか残留を」と気を引き締める渡部さん。今年も秋田犬の旗と共に、チーム一丸で戦うBB秋田を後押しする。