秋田県横手市雄物川町の原田進さん(73)、真利子さん(64)夫婦の元に8月中旬、新しい家族が加わった。生後2カ月の雌の秋田犬「凛」だ。小さな体で元気いっぱいに駆け回る姿に、原田さん夫婦の笑顔は絶えない。
家の中では、お気に入りのペンギンのぬいぐるみをくわえて振り回し、ボールを追いかけては床の上を転げ回る。散歩中や庭で遊ぶときは、動くものに興味津々。風に揺れる葉や飛び立つ鳥に目を輝かせ、虫を見つけて飛びつくこともある。真利子さんは「好奇心旺盛で無邪気な子」と目を細める。

思い切り遊んだ後は、まるで電池が切れたおもちゃのようにぱたりと動かなくなるという。一方、遊び足りないのに柵へ戻そうとすると、扉を閉められまいと、右後ろ脚を器用に外に残すのがお決まりだ。「なかなか賢いでしょ」と進さん。閉められるのを察知し、ちらりと目を向けるしぐさに真利子さんも「『まだ遊びたい』と訴えているようで愛らしい」と話す。
しつけは「いけないことはしっかりと怒り、褒めるときはたくさん褒める」を意識。「待て」や「お座り」などを勉強中だが、ご飯だけは我慢できず、器や手のひらに置いた途端に顔を突っ込んでしまうという。

凛は進さんが名付けた。「まっすぐで気品のある凛とした秋田犬に育ってほしい」という願いを込めた。現在は、子犬らしいしぐさや表情に「かわいくてつい甘やかしてしまう」と笑う。
原田さん夫婦は、これまでにゴールデンレトリバーやラブラドルレトリバーを飼ってきた。20年以上にわたり犬とともに暮らしてきたが、数年前に亡くしてからは静かな日々が続いた。
そんな中、進さんが昨年、友人から「秋田犬を飼ってみないか」と声をかけられた。散歩中に見かける秋田犬の堂々とした姿に心を奪われてきたといい、「自分も並んで歩いてみたい」と迎え入れることを決めた。

進さんは建築業を営み、大工歴は50年を超える。凛を迎えるのが待ちきれず、半年前に手作りの柵を用意。室内に置かれ、凛のお気に入りの場所になっている。将来は体のサイズに合わせて「増築予定」で、より快適に過ごせる環境を整えるつもりだ。
散歩は朝昼晩の1日3回で、自宅周辺を巡るのがルーティン。凛は歩くだけでなく、急に駆け出すこともある。リードを握る進さんは「待て待て」と声をかけながら、走って追いかけることもしばしば。「70歳を超えてこんなに走るとは思わなかった」と苦笑いしつつ、「いい運動になってる」と汗をぬぐう。
長年犬とともに暮らしてきた進さんは、凛が最後の愛犬と決めている。「まだ子犬だが、大きくなった凛と並んで歩く日が来るのが楽しみ」。凛の成長をかみしめるように見守っている。