疲れ癒やす愛らしさ 八峰町の山田さん夫妻と茶太郎

 秋田県八峰町峰浜でナシを生産する山田勝さん(36)、菜々子さん(37)夫妻は、秋田犬「茶太郎」(雄、4歳)と暮らす。ナシの栽培や出荷に追われる日々の中、茶太郎は2人に癒やしをもたらしてくれる存在だ。

 茶太郎はとにかく人が大好き。散歩中に出会う人やナシの直売所を訪れる人に尻尾を振って迷わずに駆け寄る。一方、雷が鳴ると体を震わせ、腰を抜かしてしまうほどの怖がり。散歩中によそ見をして側溝に足を落としたり、電柱にぶつかったりするおっちょこちょいな一面もある。山田さん夫妻の帰宅を喜ぶあまり、水の入った皿に足を入れてばたつかせ、床を水浸しにしたこともある。

笠原果樹園の園内で茶太郎と触れ合う勝さん(右)と菜々子さん

 山田さん夫妻はともに能代市出身。結婚後は横浜市で暮らしていたが、2022年9月に八峰町の地域おこし協力隊員として採用され移住した。同じ時期に能代市のブリーダーを通じて迎えたのが、当時1歳半の茶太郎だった。

 菜々子さんは能代市の実家でも20年ほど前まで別の秋田犬と暮らした経験があり、「ふわふわとした大きな体が魅力だった。甘えん坊なところがたまらなかった」と振り返る。しかし横浜市ではマンション暮らしで飼えなかったため、「地元に移住したら秋田犬を家族にしたい」との思いが強かったという。

 茶太郎を飼い始めた当初は、凛々しい表情に思わず見とれていたが、成長するにつれて顔に丸みが増して愛らしさが際立つようになった。菜々子さんは「昔はきりっとした顔つきだったのに、だんだん表情が柔らかくなって、今は大きなぬいぐるみのよう。かわいい」と笑う。

ナシを食べる茶太郎

 散歩は朝晩の2回。朝は5時半から30~40分かけて自宅周辺を巡る。タオルやロープを口にくわえ、勝さんと引っ張り合う遊びも大好き。勝さんは「茶太郎との散歩のおかげで早寝早起きになり、生活習慣が整った。欠かせないルーティンになっている」と話す。

 夫妻は、地域おこし協力隊員として町の農産物のPRなどに従事した後、今春から町内でナシの栽培に取り組んでいる。町特産のナシ「峰浜梨」を約140年にわたって栽培してきた「笠原果樹園」を事業承継。1・4ヘクタールの園内で和梨や洋梨を育て、収穫や販売に汗を流している。

 茶太郎は自宅で留守番をすることが多いが、2人に連れられて園内をのびのび歩くこともある。木々の間を行き来したり、草の上にごろんと寝転んだり。収穫したナシを切り分けてもらうと、うれしそうにかじりつく。

 2人は現在、町に移住した仲間とともに町内の旧鮮魚店をリフォームし、ナシをお菓子やジュースに加工して販売する施設の開店準備を進めている。

 「疲れていても茶太郎の丸い顔を見たら癒やされる」と勝さん。菜々子さんも「茶太郎がいてくれるだけで、また頑張ろうと思える」と目を細める。新たな夢を追いかける2人のそばで、茶太郎はこれからもぬくもりを届けてくれる。

茶太郎と散歩する菜々子さん

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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