にかほの自然そっとPR 「一日観光協会長」やまと

 鳥海山と日本海を望み、多くの観光名所がある秋田県にかほ市。その情報を発信する市観光協会のインスタグラムに時折登場し、にかほを〝PR〟する秋田犬がいる。その名はやまと(雄、7歳)。「一日観光協会長」として市内イベント会場や市観光拠点センター・にかほっと、元滝伏流水などに足を運んで楽しそうに遊ぶ様子が紹介され、人気を呼んでいる。

 飼い主は、2025年4月から同協会の事務局長を務める斎藤和幸さん(62)。「一日観光協会長というのは正式な肩書きではなく、SNS(交流サイト)での話題づくりなんですよ」と笑う。凜として落ち着いたたたずまいの秋田犬は、県内外の人々を引きつける大きな力を持っていると感じている。

満開になった勢至公園の桜の下を散歩するやまとと斎藤さん

 斎藤さんがやまとを迎えたのは2018年夏。きっかけは、長年一緒に暮らしたシベリアンハスキーを亡くしたことだった。家族全員が深い悲しみと寂しさを経験し、「また大きな犬と暮らしたい」という思いが自然と芽生えた。

 最初は保護犬の秋田犬を迎えようと里親募集に手を挙げたこともあるが、縁は結ばれなかった。それでも秋田犬という犬種の魅力に強く引かれて飼育を模索し、やがて群馬のブリーダーとつながった。生後2カ月のやまとを家族として迎えることになった。

 秋田犬との暮らしは思ったほど容易なものではなかった。専門家からは「ハスキー10匹を飼うより、秋田犬1匹の方が難しい」と言われたという。当初、ハスキーを飼っていた経験から、大型犬なら広い庭で自由に走らせればのびのび育つのではないかと考えていた。しかし秋田犬は体格もよい上、力も強く、飼い主がしっかり制御できなければ周囲に危険を及ぼす可能性もある。

 このため秋田犬を飼うことの責任を改めて感じ、やまとが生後5、6カ月の頃、訓練所に数か月間預ける決断をした。週末には自身も訓練所に通い、リードの持ち方や指示の出し方を学びながら、やまとと共に訓練を重ねた。

 臆病で慎重な性格のやまと。家では居間のカーペットでのんびり過ごす穏やかな存在だが、外に対しては警戒心が強い。特に聴覚が鋭く、少しの足音にも敏感に反応する。「毎朝同じ新聞配達員のバイクの音には全く反応しないんだけど、その人が休みで別の人が来ると朝4時でもほえるんですよ」と斎藤さん。

 ある日、やまとを観光協会が入るにかほっとに連れて行ってみた。するとその姿は観光客らの目をひときわ引いた。くるりと巻いたしっぽ、堂々とした体格、穏やかな表情…。「みんなが注目していた。秋田犬ってすごいなと思いました」

冬の元滝伏流水の様子を紹介した「一日観光協会長」のやまと(にかほ市観光協会インスタグラムより)

 斎藤さんは、やまとを時折イベントにも連れて行ってみた。秋田犬を飼っていることを知った地域の人から「見てみたい」という声が上がっていたからだ。そうした経験を重ねるうち、やまと自身も少しずつ人の多い場所に慣れていった。

 ただし、イベントへ連れて行くのはやまとの負担にならない範囲にとどめているという斎藤さん。「看板犬にするつもりはありません。主役はあくまでイベントですから」とも。

 やまとは間もなく8歳。大型犬としてはシニア期だ。斎藤さんは「新しいことを覚えさせようとは思ってないし、自然の中でゆったりと過ごさせてあげたい」と語る。やまとと斎藤さんは、四季折々の自然に囲まれたにかほで、これからもぬくもりのある時間を共有していく。


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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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