訓練開始から1月半、秋田犬「大河」の目つき柔らかに

  • 2021-02-25
  • 2021-02-25
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 かみつき事故を起こし保健所に引き渡された秋田犬「大河」(雄、3歳)を矯正する訓練が始まって1カ月半あまり。人が近づくだけで目をつり上げ、大きなうなり声を響かせていた大河の今は。

鈴木さんに見守られる大河。きつかった目つきはだんだんと柔らかくなってきた

 「大河、行くよ」

 18日昼、秋田市雄和椿川にある県動物愛護センター「ワンニャピアあきた」。ドッグトレーナー鈴木明子さん(59)に連れられ、大河がエントランスホールに現れた。元気よく尻尾を振り、足取りは軽やかだ。

 「待て」と鈴木さんが指示する。大河はぴたっと歩みを止めた。

 「伏せ」。身をかがめた。「おやつだよ」。鈴木さんの手からうれしそうにおやつを食べた。

 訓練が始まった頃は、知らない人にうなり声を上げ、ほえ立てる大河だった。今では周囲に見知らぬ人がいても落ち着いた様子。きつかった目つきも柔らかくなってきた。通りがかった職員の手からもおやつを食べ、近づいて顔をなめるようなそぶりを見せた。

 「今は『外の世界は人からおやつをもらえたり、話しかけてもらえたりして楽しいよ』と教えている最中」。鈴木さんによると、大河の心にある人への恐怖心や不信感を取り除き、安心感を与えている段階だという。この先、鈴木さんがいない状態でもたくさんの人と触れ合えるようにするのが目標だ。

 大河は大館市で飼われていた昨年10月、飼い主の家族にかみついてけがをさせた。

 飼い主の男性(41)は家族らと相談していったんは保健所へ引き渡したが、殺処分させたくないと、秋田犬の殺処分ゼロを目指す秋田市の一般社団法人「ワンフォーアキタ」に相談。別の飼い主へ譲渡することを前提に、トレーナー歴約30年で200匹以上のしつけに携わってきたワンフォーアキタの鈴木さんが訓練を引き受けた。

 訓練は1月8日にスタート。鈴木さんは毎日2時間程度、大河と過ごしている。

 犬舎の外から話しかけ、心を開いてもらうところから始まり、3週間がたつ頃には同じ犬舎に入れるようになった。1カ月がたつ頃には、リードを付けながらワンニャピアあきたの中を歩けるようになった。

 次の段階は、犬の移動用ケース「クレート」に入れるようにしたり、車に乗せたりできるようにすることを目指す。雪解けを待ち、屋外での散歩も始める。

 鈴木さんは「犬はルールを教え込んだだけ吸収して覚えていく。大河が変わっていく様子を見て、かみつき事故を起こした犬でもしつけ次第で変われるのだと知ってほしい」と話す。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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