秋田犬、殺処分させない かみつき矯正目指し訓練

  • 2020-11-19
  • 2020-11-19
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 秋田県大館市で先月、飼い主の家族にかみついてけがをさせた秋田犬が、殺処分ゼロを目指す一般社団法人「ワンフォーアキタ」のドッグトレーナーにより、矯正を目指してトレーニングを受けることになった。トレーナーの鈴木明子さん(59)は「凶暴な犬を殺処分するだけでは何も解決しない。正しくしつけられれば、犬はいくらでもやり直せる」と話している。

飼い主の男性と面会する鈴木さん(左)=1日、秋田市八橋のワンフォーアキタ事務所

 先月19日、大館市の民家で飼われている秋田犬「ソウソウ」(雄、3歳)が、飼い主と同居する60代の父と、遊びに来ていた90代の祖母の2人にかみつき、軽傷を負わせた。この事故は新聞やテレビでも報じられた。

 飼い主の男性(41)によると、ソウソウは犬好きの母が2018年1月に知人から購入。母と男性、弟で世話をしてきた。性格は「やんちゃ」。父との相性が悪く、うなることがあったため、普段から「犬には近づかないように」と伝えていたという。

 事故後、周囲から「人をかむ凶暴な犬がいるなんて怖い」「これまでもほえる声がうるさく、迷惑だった」などの声が聞こえてきたため、家族や親族と話し合い、大館保健所へ引き渡すことを決めた。

 通常、保健所へ引き取られた犬は、県動物愛護センター「ワンニャピアあきた」(秋田市雄和)へ送られる。譲渡適性検査を受け、攻撃性が高いと判断されれば殺処分される。このため、飼い主の男性は「命だけは助けてあげたい」と、秋田犬保存会に相談。捨てられたり、飼い主が飼えなくなった秋田犬を保護しているワンフォーアキタを紹介され、連絡を取った。

 男性は今月1日、秋田市八橋のワンフォーアキタ事務所を訪れ、鈴木さんと面会。ソウソウの普段の様子や飼い方、事故の状況を伝えた。男性は「私から見れば(ソウソウは)じゃれているのに、他の人には『凶暴だ』『かじる』と取られる。どうすればいいか」とこぼした。

現在のソウソウ。早ければ月内にも大館保健所へ引き渡される(男性提供)

 鈴木さんは、秋田犬は大型で力が強いため、周囲が安全に暮らせるよう飼い主がしっかりとしつけることが大切だと強調。「犬の性格を変えるのは難しいが、かんだり、ほえたりしないよう、周囲に順応できるような社会性を身に付けさせることはできます」と声を掛けた。

 鈴木さんはこれまで、秋田犬によるかみつき事故を何度も見聞きし、その都度、愛犬家の一人として居たたまれない気持ちになった。これまで200匹以上のしつけに携わった経験を生かし、ソウソウの矯正を手助けする決意をしたという。

 ソウソウは早ければ月内にも、大館保健所に引き渡され、トレーニング場所の提供などで協力するワンニャピアあきたへ移される。その後、鈴木さんが毎日2時間のトレーニングを重ねていく。鈴木さんは「人に対する安心感さえ身に付けてもらえれば、また人と幸せに暮らすことができる」と言い切る。ソウソウは数カ月のトレーニングの後、別の飼い主に引き渡される予定だ。

県内、犬のかみつき事故 19年度は31件、殺処分2匹

 県動物愛護センター「ワンニャピアあきた」によると、県内で2019年度にかみつき事故を起こした犬は31匹に上り、このうち秋田犬は3匹だった。

 事故後、ほとんどの犬は飼い主が継続して飼育しているが、飼い主が手放した2匹は凶暴性が高く譲渡が難しいため殺処分された。事故数は飼い主が保健所に報告したものだけで、実際はもっと多いとみられる。

 金和浩所長(59)は、かみつき事故が起こる原因を「飼い主と犬の信頼関係が欠け、しつけがうまくいっていないため」と指摘。犬が飼い主の指示をきかない場合、ワンニャピアの主催する犬のしつけ方教室に参加したり、訓練所で矯正したりすることを勧めている。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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