育児放棄から救出 愛に包まれ「福」振りまく【動画】

  • 2021-03-18
  • 2021-03-18
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 生まれた直後に母犬から育児放棄され、一時は生死をさまよった秋田犬「福」(雄、1歳)。現在は愛犬家の夫婦に引き取られ、大きな愛情に包まれて元気に暮らしている。秋田市広面の住宅街に福を訪ねた。

福と山田さん夫婦

「福、あいさつして」

 飼い主の山田覚さん(60)と智子さん(55)が声を掛けると、福はうれしそうに記者を歓迎してくれた。取材に備えてシャンプーをしたといい、白い毛並みはふわふわだ。しばらくはしゃいだ後、福はぐうぐうといびきをかいて眠ってしまった。ころころと変わる表情や行動がかわいらしく、見ていて飽きない。

多彩な表情を見せる福

 時折強い雨が降る中、福と山田さん夫婦の散歩に同行した。あいにくの天気でも福の足取りは軽快だ。散歩が大好きで、1月に暴風雪に見舞われたときも外に連れ出すようせがんだという。

 「散歩中、福がどんなことを考えているのかと想像するのが楽しくて。雨や雪が降っていても嫌だと感じたことはないんです」と覚さん。

 夫婦は元々、シェットランドシープドッグとミニチュアシュナウザーの2匹の犬を飼っていた。「3匹目に秋田犬が欲しい」と考えていた2019年秋、秋田犬保存会(本部・大館市)の会員制交流サイト(SNS)で子犬の飼い主を募集していることを知った。

 同年に大館市で生まれた子犬は、母犬に育児放棄されたため、きょうだい犬と共に瀕死の状態になった。飼い主から同市のブリーダー・羽沢麻美さん(45)が引き取って間もなく、きょうだい犬は死んでしまった。

生後間もないころの福

 羽沢さんは生き残った子犬を懸命に世話した。免疫力を付けるために重要な母乳を飲んでいないことが分かり、母乳の成分に近い犬用ミルクを昼夜問わず3時間置きにスポイトで与えた。10日ほど続けると、子犬は自力でごくごくとミルクを飲めるまでに回復した。

 山田さん夫婦が飼い主に応募しようとした矢先に、募集が締め切られてしまった。それでも二人は「ダメ元でも」とメッセージアプリにありったけの思いをつづった。夫婦の長女はドッグトレーナー、その夫は動物看護師であること。覚さん自身も「愛犬飼育管理士」の資格を持っていること。何よりも「この犬を誰よりも絶対幸せにする」という強い意志があること―。

 長文のメッセージを読んだ羽沢さんは「あ、この人だな」と思ったという。電話でやりとりするなどして、山田さん夫婦は正式に飼い主に選ばれた。

 初めて対面したときのことを、智子さんは「ぷくぷくで、両手に収まるくらい。とにかくかわいくてかわいくて」と懐かしむ。名前には、これまで人の世話になって応援されてきた分、これからは自らが「福」を届けられる存在になるように―との思いを込めた。

生後1カ月ごろの福

 そんな福も1歳を過ぎ、今では抱きかかえるのが大変なほど大きくなった。

 覚さんは「いなきゃ困る。生活の一部だから」といとおしそうに語る。「車が来たら止まる、人に飛びかかったりかんだりしないなど、周りに迷惑を掛けないように強く教えています」ときちんとしつけることも忘れない。

 育児放棄から生き残った秋田犬が、山田さん夫婦と周囲に「福」を振りまく日々は、これからも続いていく。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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