人生で最後の相棒に 保護犬・桃次郎と金さん【動画】

  • 2022-08-18
  • 2022-08-18
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 「桃には『ありがとう』という言葉しかない」。秋田市飯島の金政宏さん(59)=会社員=はしみじみと語る。山梨県で保護された秋田犬の桃次郎(雄、9歳)を引き取って7年。相棒のような存在となった犬と暮らす日々の幸せを、金さんはかみしめている。

 先月下旬のある日、金さんと桃次郎は雨の中を朝の散歩のため近くの公園へ出掛けた。桃次郎は雨を気にする様子もなく、軽やかな足取りでずんずん歩いていく。

 ある場所では、何か気になることがあったのか、かたくなに動こうとしなくなった。

 「ちょっとわがままなところもあるんです」と金さんは苦笑い。散歩が終わる頃、桃次郎は満足したのか、目を細めて笑っているような表情を浮かべていた。

朝の散歩を終え、満足そうな表情を浮かべる桃次郎

 金さんは動物好きな両親の下、小さい頃から秋田犬や猫、ハトなどに囲まれて育った。近所から「動物園」と呼ばれるほど多くの生き物を飼育していたという。

 高校を卒業し、就職してからほどなく、雑種犬を引き取った。犬は特に母親によく懐き、1996年に父親が病気で他界した後も母親と金さんの心の支えだった。

 その犬は引き取ってから約17年後に大往生。2009年には母親も他界した。

 「おふくろを亡くしてからは、毎日が会社と家の往復だけ。家に帰っても独りでさみしくて」。金さんは大きな喪失感に襲われていた。

金さん(右)と桃次郎

 当時の勤務先の社長は、母親の死からなかなか立ち直ることのできない金さんを見かねて「また犬を飼ってはどうか」とアドバイスしてくれた。その時、金さんは昔飼っていた秋田犬のことを思い出した。大型で飼い主に忠実なところが好きだった。雑種犬が死んだ直後は、二度と犬は飼いたくないと思っていた金さんだが、「人生最後と思って、もう一度秋田犬を飼おう」と思い直した。

 インターネットで秋田犬を探していたところ、山梨で飼い主を探している保護犬を見つけた。それが当時2歳の桃次郎。情報公開から数カ月経っても里親が見つかっていなかった。最悪の場合、殺処分の可能性もあった。

 それならばと、金さんは山梨へと向かった。初対面の桃次郎は落ち着いていて、歯を見ようと口に手をやっても嫌がらなかった。桃次郎が心を開いてくれたように感じ、引き取ることにした。

散歩中に見つけた花の前で記念撮影

 金さんが桃次郎との生活をブログや交流サイト(SNS)で公開すると、全国各地の秋田犬の飼い主らとつながりができてきた。

 びっくりするような出合いもあった。19年ごろ、大館市の観光交流施設「秋田犬の里」に出掛けた時のこと。館内に桃次郎にそっくりな秋田犬写真が展示されていた。赤毛の雌で名前は「ナナ」。SNS上で飼い主を探して連絡したところ、桃次郎の4歳上で、2匹は同じ犬舎出身ということが判明した。

 どちらも保護犬のため正式な血統は不明だが、金さんとナナの飼い主は、2匹を“きょうだい”だと思っている。

同じ方向を向く桃次郎(右)とナナ。後ろはナナの飼い主=2021年5月

 21年には、東京で暮らすナナと飼い主が秋田へ旅行に来た。最初は吠え合っていた2匹だが、すぐに落ち着き、写真を撮ろうとすると同じ方向に顔を向けた。金さんたちは2匹のリラックスした様子に驚いたという。

 金さんも桃次郎もお互い年を重ね、健康面に不安を感じるようになってきた。今年の春先には桃次郎がすい炎を起こした。「また桃に何かあったらと思うと心配」と、金さんは食事や運動に気を遣っている。

 金さんの夢は、桃次郎と全国の秋田犬仲間に会いに行くことだ。「それまでお互い健康でいないとな」と力を込めた。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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