かみつき事故の秋田犬、矯正訓練で徐々に落ち着き

  • 2021-01-29
  • 2021-01-29
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 今月上旬、人へのかみつき事故を起こした1匹の秋田犬を矯正する訓練が、秋田市雄和椿川にある県動物愛護センター「ワンニャピアあきた」で始まった。秋田犬の殺処分ゼロを目指す同市の一般社団法人「ワンフォーアキタ」のドッグトレーナー鈴木明子さん(59)が通い詰めること3週間。徐々にではあるが、犬に変化が表れてきた。

 「大河、おいで」。20日昼ごろ、ワンニャピアあきたの一室で鈴木さんが呼び掛けると、フェンス越しに雄の秋田犬(3歳)が近寄ってきた。

鈴木さんの声に耳を傾ける秋田犬の大河=20日、ワンニャピアあきた

 「ほら、おやつだよ。座って」。言葉を続けると、尻尾を上げながら、鈴木さんの指からおやつをなめ、食べた。

 大河という名前は「のびのびと生きていってほしい」との願いを込め、鈴木さんが付け直した。この秋田犬は昨年10月、大館市の民家で飼い主の家族にかみつき、けがをさせていた。

 飼い主の男性(41)によると事故後、周囲から「人をかむ凶暴な犬がいるなんて怖い」「これまでもほえるのがうるさく、迷惑だった」などと苦情が寄せられ、家族らと相談していったんは保健所へ引き渡すことにした。

 しかし、凶暴な犬は殺処分される可能性が高い。男性は「どうにかして命だけは助けてあげたい」と思い直し、ワンフォーアキタに相談。別の飼い主に譲渡することを前提に、訓練を実施することになった。

 トレーナー歴約30年という鈴木さんが、これまでしつけに携わった犬は200匹を超す。秋田犬によるかみつき事故を何度も見聞きし、その都度、愛犬家の一人として居たたまれない気持ちになったという。

 大河の訓練は8日にスタート。まずは鈴木さん自身や新たな環境に慣れさせようと、おしゃべりや餌やり、掃除などをしながら毎日2時間ほど一緒に過ごす。最初は人が近寄るだけで大きくうなり、にらみ付けていた大河だが、訓練開始から1週間ほどで少しずつ落ち着きを見せるようになってきた。

 「大河の心には『飼い主に捨てられた』という悲しみがある。まずは心を開いてくれるのを待ち、それから人との関わり方を教えていきたい」と鈴木さん。今後、数カ月をかけてほえたり、かんだりしないよう訓練を進めていく。

 「犬は気持ちを表現するためにうなったり、かんだりすることがある。でも、しつけさえしっかりしていれば、かみつき事故を起こすことはなかったはず」。犬がまた人と幸せに暮らせるよう願い、サポートしていく。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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