大好きな地元の魅力を絵本を通じて伝えたい―。東北芸術工科大(山形市)4年の伊藤萌さん(21)が、出身地の秋田県大仙市を舞台にした絵本の制作費を募るクラウドファンディング(CF)に挑戦中だ。主人公は秋田犬のキャラクター「ルル」。実在する店や県内の中学生から募集した思い出なども盛り込み、同市に「行ってみたい」と思ってもらえる一冊を目指している。
物語は、ルルが2歳の誕生日に不思議な招待状を受け取るところから始まる。全国花火競技大会「大曲の花火」が開催される日、ルルが同市を訪れ、店や人との出会いを通じて地域の魅力に触れていく様子を描く。
制作のきっかけは大学で友達と出身地の話になった時のこと。同市は「花火がすごい」という知名度や関心はあるものの、実際に訪れたことのある人はいなかった。「せっかくなら、どうにかして現地に来てもらえないかな」
そもそもなぜ、自分は地元が好きなのか。地元での思い出を振り返ってみると、ある共通点が見えてきた。
小学生の時、授業で地元の和菓子店「菓子司つじや」の従業員が来て花火の話をしてくれたのが面白く、その時に食べた「三杯もち」がおいしかったこと。部活動に明け暮れていた高校時代、テストで休みになる期間は友達とカフェで話し込むのが楽しかったこと…。
いずれも場所だけではなく、そこでの経験や過ごした人との記憶が思い出とひも付いていることに気が付いた。そこで、このような思い出に共感したり、新たに作ったりするために「行ってみたい」と思わせる発信が大事になると考えた。
幅広い年代に魅力を発信しようと選んだ手段は絵本。読む人が登場人物に自分を重ね「自分ならどこに行って、この人に会ったら何を聞こう」など、自分ごとに捉えてさまざまな想像や解釈をしてもらえるのではという狙いだ。
伊藤さんは「絵本を通じて大仙市に足を運んだり、地域の魅力を再発見したりする機会になればうれしい。ぜひご支援をお願いしたい」と話す。
CFサイト「SCOP(スコップ)」で1口2千円から受け付けており、目標額は60万円。来月20日まで。返礼品は絵本やポストカードなど。