みちのくの小京都に映える武士たち 角館の民泊「縁」の看板犬カップル(上)

  • 2021-10-13
  • 2021-10-14
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秋田県仙北市角館町・武家屋敷通りの黒塀に沿って歩く秋田犬のカップル。民泊「縁(えにし)」の看板犬として親しまれている「すーちゃん」(雄、4歳)と「ふじこ」(雌、2歳)だ。「みちのくの小京都」として全国区の知名度を誇る角館は、間もなく紅葉シーズンを迎える。多くの観光客でにぎわいを見せる前に、角館の人気者となりつつある2匹を訪ねた。(取材・鎌田一也)

宿泊客と一緒に、リードを手に歩く吉見さんとすーちゃん(右端)、ふじこ

すーちゃんは体重25キロで、秋田犬の雄の成犬としては小柄だ。ふじこは体重32キロで、すーちゃんより少し大きいが、脚は細く小顔だ。性格も対照的。すーちゃんはシャイで臆病。雷や花火、それにシャンプーが苦手。ふじこは天真らんまんだ。2匹はとても仲が良いが、吉見さんは2匹を「かかあ天下みたいな関係かな」と評する。食欲もふじこの方もが盛んで、時にはすーちゃんが食べ残したエサを奪うように食べることもあるという。

すーちゃん(左)よりふじこの方が少し体が大きい

9月下旬のある日、記者は女性宿泊客2人と共に2匹の散歩に同行した。吉見さんに散歩に行くと告げられると、2匹とも大喜び。気がせいたのか、ふじこは記者が履いていたスリッパをくわえて外に出ようとした。「スリッパは置いていってほしいな」と、吉見さんはふじこをたしなめていた。

散歩が始まってからも、最初のうちは、吉見さんが持つリードを2匹がぐいぐいと引っ張った。「いつも、散歩を始めたばかりの時は元気いっぱいなんですよ」。

散歩中、2匹がじゃれ合うこともある

2匹ともとても人懐っこいタイプで、行き会う人にほえたりうなったりすることはないが、すーちゃんが他の雌犬に近づいて触れ合おうとすると、ふじこはやきもちをやいたかのようにほえかかった。

ただ、吉見さんの説明を聞きながら2匹の様子を見ていると、ふじこが激しくほえる様子さえ、ほほ笑ましく感じられた。すーちゃんが、他の雄の秋田犬と縄張り争いをするときにほえるのとは明らかに様子が違う(そこはさすが秋田犬、という迫力だ)。ちなみに、そんな時、ふじこは、勇ましい姿を見せるすーちゃんの陰でそっと様子を見守っている。

散歩中に鉢合った雄の秋田犬にほえられ、応戦するすーちゃん。ふじこはすーちゃんの後ろで様子を見守っていた

「雄雌2匹を一緒に飼っているので、性格の違いがよく分かってとても楽しい」と吉見さん。一緒に散歩した宿泊客は2人とも大の犬好きで、歩きながら話が尽きることがない。「普通に旅館を経営している限り、お客さんとこんなに長い時間話し込むことはない。散歩の時間は私にとっても楽しいひととき」と吉見さんはしみじみと話す。

縁に泊まるのは3回目という女性(69)は、過去に秋田犬を飼っていたことがあるという。「年齢的に新たに秋田犬を飼うのは難しいので、今はよその秋田犬に合いに行くのが一番の楽しみ。すーちゃんもふじこちゃんもとてもお利口さんで、吉見さんが上手に育ててるなあと思う」と笑顔を見せた。

もう一人の女性(54)は昨年、旅行雑誌で縁のことを知って訪れて以来、2回目の宿泊。「こんなに濃密に秋田犬と触れ合えるとは思っていなかった。幸せです」と声を弾ませていた。

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わんこがつなぐ世界と秋田

モフモフした毛並みに、つぶらな瞳、くるりと丸まった愛らしいしっぽ。たくましい身体を持ち、飼い主に忠実な性格でも知られる秋田犬は、今や世界中の人気者です。海外での飼育頭数は増え続け、本場の秋田では観光振興に生かそうという動きも活発化してきました。秋田魁新報は「秋田犬新聞」と題し、国内外のさまざまな情報を発信していきます。秋田犬を通して世界と秋田をつなぐ―。そんなメディアを目指していきます。

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