成犬A雄部門では、大阪府八尾市の会社経営・仲野秀明さん(70)の愛犬「五門」(5歳、雄)が最優秀賞に輝いた。
受賞者には内閣総理大臣菅義偉賞が贈られ、特に優れた犬がいた場合に授与される秋保名誉章を除けば、本部展で最も栄誉ある賞とされる。
五門は2015年9月、秋田犬保存会の遠藤敬会長宅で生まれた。遠藤会長から「優勝を狙える犬だから」と太鼓判を押され、生後6カ月のころに譲り受けた。
何よりも大切なのは運動だな
仲野さんの秋田犬の飼育歴は45年。01年の本部展では秋保名誉章を獲得したことがあり、秋田犬に関して周囲から一目置かれる存在だ。
良い犬を育てるこつについて尋ねると「何よりも大切なのは運動だな」とすぐに答えが返ってきた。
朝は自転車で30分、夜は徒歩で1時間程度、雨の日も風の日も必ず散歩に繰り出しているという。「雨の日は特に大事。外に出て慣らさないと、驚いて耳がちょろちょろ動くようになってしまい、本番で力が発揮できなくなる」
5月3日の本部展では、開会式の際に雨が降り、水を嫌がるような犬も見られたが、五門は日頃のトレーニングの成果もあり、雨や水に驚かず堂々と振る舞っていた。
食事の管理にも気を配っている。日本犬は皮膚が弱く、栄養が偏ると肌が赤くなったり、毛が抜け落ちてしまったりするという。それを防ぐため、人が食べるものではなく、栄養バランスのとれたドッグフードを与えるようにしている。
気温が上がる夏場は体調を崩さないよう、扇風機を回すことも工夫の一つだ。
威風堂々、秋田犬らしく
五門はこれまで、本部展の幼犬A(8カ月以上10カ月未満)で3位、若犬(10カ月以上1歳6カ月未満)と壮犬(1歳6カ月以上2歳6カ月未満)で2位、成犬B(2歳6カ月以上4歳未満)で1位を取り、順調に順位を上げてきた。
これまでの集大成を見せる今年の審査では、ほかに出場していた犬や大勢の観客にも動じず、落ち着いた立ち姿を披露。審査を務めた齋藤晃・審査部長(58)=千葉県市原市=は「どの犬も素晴らしかったが、五門は特に威風堂々とした秋田犬らしい風貌をしていた」と評価した。
仲野さんは「出世する犬と、状態が落ちてその場限りの成績になる犬がいる。五門は期待に応え、見事に成果を上げてくれた」とほほ笑む。
五門は穏やかな優しい性格で、公園に連れて行くと、集まった小学生らが抱きついてきたり、触ってきたり。近所でも評判だという。
五門はまもなくイタリアへ
しかし、間もなくイタリアの愛犬家に引き取られることが決まっている。「急にいなくなったら、小学生たちも『五門、どこ行った』と寂しがるんちゃうかな。この特優1席がこの子の手土産になったんであればうれしいな」
大会後、仲野さんはそう言って五門を見詰めた。
現在、自宅には生後6カ月の子犬がいる。「おとなしい性格で、どことなく五門に似ているところがある。将来が楽しみ。秋保名誉賞を取れるよう、管理をしっかりして頑張らないと」と話す。
【飼育の達人・それぞれの流儀】
(1)今井深士さん(岐阜) こだわりの餌は英国製
(2)野原英隆さん(茨城) 余生も考えて育てよう