初めての人にはなかなか警戒心を解かないが、慣れるとフレンドリーになるという梅子。仲の良い常連客にはしっぽを振って大喜びするという。孫の莉子ちゃん(5)、壱咲ちゃん(4)きょうだいや電気工事士の70代の男性など、お気に入りの人が何人かいるが、中でも特別なのが、近所で飲食店を経営する75歳の女性だ。
梅子に与えるおやつを店に“キープ”してもらうほど梅子にほれこんでおり、毎日午後3時半ごろに顔を出すという。
女性が来店する時間が近づくと、梅子はそわそわしだす。柵の隙間から顔をのぞかせて「まだかなあ」と言いたげな顔をしたり、ガラス越しに外の様子を眺めたり…。
飼い主の高橋延枝さん(56)によると、女性は毎日、近所のスーパーで買い物をし、店の向かいの喫茶店で一息ついてから梅子に会いに来るという。
この日は日中、あまりに暑さが厳しかったせいか、来店は通常より30分ほど遅かったが、女性が来店すると、梅子は待ってましたと言わんばかりにカウンターに飛び付き、女性に前脚を差し出した。女性が買い物をしている途中も、レジ対応している延枝さんの後ろをうろうろしたり、「早く遊んでよ」と言いたげな甘えた鳴き声を出していた。
女性の梅子への接し方は堂に入っていた。
「あー、おりこうさんでねぇなあ。伏せは?」
「行儀悪いな。ちゃんとお座りしなさい。お座り」
「待て! 待てだよー」
前のめりな梅子を甘やかすのではなく、時には厳しい声も掛ける。まるでもう一人の飼い主であるかのようだ。それでも、梅子は女性のことが大好きなようで、おやつをもらった後はペロペロと女性の顔をなめ回していた。
長年にわたり犬、猫、猿などさまざまな動物を飼ってきていたという女性。2年前、13年一緒に暮らした雑種犬に先立たれてからは、猫2匹を残すのみとなった。
「もう一度犬を飼いたいという気持ちもあるが、今からでは犬の方が長生きしそうなので、今は梅子と遊ぶことで我慢している」
梅子が食が細いと聞いて、延枝さんに「キャベツと鶏肉を煮たものを与えると喜ぶよ」とアドバイスし、実際に作って持ってきてくれたこともあるという。「長年の経験に基づいた助言に助けられている」と延枝さんはしみじみと話す。
高橋家は最近、梅子に「お手」ができるよう訓練を始めたという。延枝さんは「最初はプライドの高い秋田犬に『お手』をさせることに抵抗があった」と複雑な心境を語る。ただ、お手をちゃんと出来るようになれば、お客さんに安心して梅子に触れてもらえるのではないかと考え直した。
「モフモフとした毛は本当に触り心地が良い。多くのお客さんにその気持ちよさを味わってほしい」
“レジ打ち動画”でブレーク! 酒店の看板犬・梅子の日常
(1)朝の散歩
(2)出勤
(3)レジ係就任
(5)閉店後のお楽しみ